発達障害でも障害年金はもらえるの?【社労士が解説】

1.発達障害でも障害年金を受け取れるの?

「発達障害と診断されたけれど、障害年金の対象になるの?」「仕事をしているから受け取れないのでは?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論からいうと、発達障害も障害年金の対象です。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害などは、障害年金の認定基準で「精神の障害」に含まれています。

ただし、診断を受けただけで年金が支給されるわけではありません。発達障害の特性によって、日常生活や仕事にどの程度の制限が生じているかなどを総合的に判断します。

2.どのような状態なら受給できるの?

発達障害の認定では、対人関係や意思疎通の難しさ、社会生活への適応状況、周囲の援助の必要性などが重視されます。障害等級のおおまかな目安は次のとおりです。

項目

内容

1級

社会性やコミュニケーションに大きな障害があり、日常生活を送るために常時の援助が必要な状態。

2級

対人関係や社会生活への適応が難しく、日常生活で援助が必要な状態。

3級

社会性やコミュニケーションの困難などにより、仕事に著しい制限がある状態。障害厚生年金にのみ3級があります。

 

知能指数が高いことだけを理由に対象外となるわけではありません。また、等級は表の一つの項目だけでは決まらず、生活全体の状況を踏まえて判断されます。

3.仕事をしていても障害年金はもらえるの?

働いているという理由だけで、障害年金を受け取れなくなるわけではありません。認定基準では、職場で受けている援助や配慮、仕事内容、他の従業員との意思疎通の状況なども確認することとされています。

例えば、次のような生活や就労の状況は、障害の実態を伝えるうえで大切な情報です。

項目

内容

日常生活

金銭管理や予定の調整が難しく、家族による確認や声かけが欠かせない。

対人関係

相手の意図をくみ取ることや状況に合わせた対応が難しく、継続的な援助が必要になる。

仕事

業務指示を文書にしてもらう、担当業務を限定する、周囲に確認・フォローしてもらうなどの配慮を受けている。

 

同じ「働いている」という状態でも、周囲の配慮を受けながら何とか勤務を続けている場合と、援助なしで安定して働けている場合とでは、生活・就労状況が異なります。配慮の内容や、配慮がなければ何が難しいのかを具体的に整理しましょう。

4.大人になって発達障害と診断された場合は?

大人になってから発達障害と診断された方でも、障害年金の対象になる可能性があります。ここで重要なのが「初診日」です。

初診日は、障害の原因となった病気について初めて医師の診療を受けた日です。知的障害を伴わない発達障害では、生まれつきの特性であっても、出生日が初診日になるわけではありません。発達障害の症状により初めて診療を受けた日を確認します。

子どもの頃に受診していた場合は当時の記録を確認します。一方、初めての受診が20歳以降であれば、その時点で加入していた年金制度が重要になります。なお、先天性の知的障害は出生日を初診日として扱うため、発達障害とは区別して確認する必要があります。

5.どの年金を、いつから請求できるの?

初診日の状況によって、対象となる年金の種類が変わります。

項目

内容

初診日が20歳前(年金未加入期間)

障害基礎年金1級・2級の対象です。原則として保険料の納付要件は問われませんが、本人所得による支給制限があります。

初診日が国民年金加入中など

障害基礎年金1級・2級の対象です。原則として保険料納付要件の確認が必要です。

初診日が厚生年金加入中

障害厚生年金1級~3級の対象です。1級・2級なら障害基礎年金も受け取れる場合があります。

 

障害の状態を確認する「障害認定日」は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。20歳前に初診日がある場合には、20歳に達した日との関係によって認定の時期が変わります。認定日に該当していなくても、その後に障害の状態が重くなったときは、事後重症による請求ができる場合があります。

6.申請前に何を準備しておけばいいの?

発達障害による障害年金では、本人が長年「普通のこと」と思っている困りごとが、診断書や申立書に十分表れないこともあります。次の点を確認してみましょう。

項目

内容

これまでの受診歴

子どもの頃からの受診や、診断に至る前の相談・治療の経過を整理する。

日常生活で必要な援助

食事、身だしなみ、金銭管理、通院、対人関係などで、誰がどのように支えているかを書き出す。

就労状況と職場の配慮

勤務時間、欠勤の状況、業務内容、指示方法の工夫、周囲のフォローなどを具体的に整理する。

 

例えば「金銭管理が苦手」という説明だけではなく、「支払い忘れが続くため、家族が毎月の請求書を確認している」と伝えると、必要な援助の内容が明確になります。診断書を依頼する際も、普段の生活を支えている方の協力を得ながら、実際の様子を医師に伝えることが大切です。

発達障害で障害年金を受け取れるかどうかは、診断名や就労の有無だけで決まるものではありません。まずは、初診日と年金の加入状況を確認し、日常生活でどのような援助が必要なのかを整理してみましょう。

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